「菊池事件」再審請求審について
被告人が死刑執行済の再審請求審である「菊池事件」が来年1月に結論を出すとのことです。
同様の事案では「飯塚事件」の名前を出す人が多いのですが、刑事事件オタクとしての私の個人的な趣味としては、原審が有罪の根拠とした6つの理由のうち2つに疑問を差しはさむに過ぎない構造である飯塚事件より、こちらの方が、未解明すぎるがゆえに関心を誘われるところです。
「菊池事件」とは、ハンセン病患者を強制的に施設へ収容する政策が推進されていた1951年8月、ハンセン病患者として通報されたFが、自らを通報した村役場の職員X氏の自宅へダイナマイトを投げ込んだとして殺人未遂で逮捕されたうえ、収容所の「特別法廷」で行われたとされる1審判決直前に逃亡した後、X氏が全身を滅多突きにされた遺体となって発見された・・・というものです。
X氏の遺体発見後に見つかったFは警官から銃撃されるなどの大立ち回りの上で再び逮捕され、やがて殺人未遂では懲役10年、そして殺人では死刑を言い渡されて確定し、1962年9月に死刑が執行されたのですが、Fは殺人未遂、殺人とも否認していたこと、そして「特別法廷」なるものにいろいろ問題があったことから、「冤罪だったのでは?」と、私が過去の重大刑事事件研究の趣味に目覚めた90年代ころには既にささやかれてはいました(当時は地名に由来する「菊池事件」ではなく、Fの姓に由来する「F事件」という呼称が一般的だったと認識しています)。
もっとも、再審請求審としては、おそらく「自分がハンセン病患者の死刑囚の身内となる過去の事件を蒸し返されたくない」という理由で親族の請求権者を確保できておらず、当時は
「このまま忘れられていくんだろうな…」
と思っていたため、数年前に再審請求がなされたというニュースを見た時には驚いたものです。
報道によれば、再審の根拠となる「新証拠」は、①凶器とされる短刀と遺体の傷の不一致、②「Xに犯行を告白された親族の供述の供述心理的な問題点」であり、それに加えて③「違憲とされた『特別法廷』での死刑判決という手続的不備」だとのことです。
①については、証拠に直接当たっていない身なので裁判所の結論を見るしかなく、②については一般論としては正直筋が悪いと思いつつ、その点よりも「そもそも伝聞法則との処理はどうなっているのだ?」というところに刑訴法的な収まりの悪さを感じていたりします。そして、最後は③の論点の特異性ですか。
正直、この事件の取り上げられ方は、純粋な刑事事件としての問題点よりも私の嫌いな政治運動的な動きが色濃く感じられてアレなのですが、それを割り引いても、これまで闇に包まれていたがゆえに未解明なことが多い事件に現代的な光が当たる点、そしてハンセン病に基づく「特別法廷」というガチな歴史の闇との関わりには、関心を刺激されざるを得ません。wktkが止まらない。。。
