山上徹也被告人の量刑
山上徹也被告人の安倍元首相銃撃事件の裁判が始まったようです。安倍元首相を狙っていた山上被告人が、事件前夜に岡山入りした安倍元首相を狙ってうろついていたものの、警備の厳重さを見てこの日は断念したことが報道されたため、「岡山県警は有能!」と言われていた時期があったことを思い出しました。日本の首相経験者は、高市首相で66人目ですが、実はその1割以上となる7人(伊藤博文、原敬、高橋是清、浜口雄幸、犬養毅、斎藤実、安倍晋三)が殺害されていたりします。なんという修羅の国。
これらの首相経験者殺害犯の量刑をみてみると、こんな感じです。
伊藤博文←安重根 死刑。
原敬←中岡良一 無期懲役判決を受けるが、10年強の服役後に恩赦で釈放。
高橋是清←中橋基明 死刑。
浜口雄幸←佐郷屋留雄 死刑判決を受けるも翌年恩赦で無期に減刑、6年後に仮出所。早杉。。。
犬養毅←三上卓(5.15事件、現場指揮役)懲役15年の判決を受けるが恩赦によって5年弱で出所。早杉。。。
斎藤実←酒井直(2.26事件、現場指揮役)死刑
首相暗殺犯なんて基本的に最悪クラスのテロリストのはずですが、この恩赦率の高さに戦前の闇を感じます。
では、安倍元首相を殺害した山上被告人の量刑はどうなるのか…ですが、私の予想は求刑無期、判決無期という、あまり面白くないものだったりします。
リーディングケース(?)は、2007年の長崎市長射殺事件。
長崎市の現職市長が再選を目指した選挙期間中に射殺される…という特異なこの事件は、一審では「民主主義の根幹を揺るがした」という評価で、殺人前科なし、被害者1人の事件ではかなり珍しい死刑判決でしたが、二審では「動機は被害者に対する恨みであり、選挙妨害そのものが目的ではない」という理論で無期懲役に減刑され、その後上告棄却を経て確定しました。
山上被告人の動機も、安倍元首相の殺害はあくまでも統一教会の後援者とみなした安倍元首相への恨みであり、民主主義への積極的な挑発を含むものではないとすれば、死刑には至らず、無期懲役相当なのではないかと思われます。ちなみに、基本的には市民社会における適法な所持・使用がほぼ許されない銃による殺人は、他の凶器による殺人よりも重く評価されることが多いこと、手製とはいえ…というか、手製であればなおさら暴発等によって周囲を巻き込むおそれもあったことからすれば、有期への減刑はないでしょう。
そういう見方をしている私の立場からは、事件に社会的な意味を持たせて減刑を叫ぶ一部の「擁護」論者は
「お前ら、被告人を死刑にしたいのかよ…?」
というものだったりします。銃撃事件に社会的な意味を持たせようとすると、この事件の位置づけは「民主主義社会の根幹を銃撃によって揺るがそうとし、現に揺るがした」ということになり、死刑一択になるのです。
