弁護士独立開業候補地としての岡山市東区
今年も行われる、法律事務所不存在地域での弁護士無料相談会「あなたの街で会いましょう」は、応募者の減少の影響か、昨年に続いて2か所担当することになりました。人口集中地以外での弁護士活動が、流行から外れつつある厳しい現実をひしひしと感じる今日この頃です。
今年の担当地域その1は「岡山市東区」、岡山に残る法律事務所不存在地域である1区1市10町2村の中では一番人口が多い地域です。
独立した裁判所はなく、また独立した市ではなく「岡山市の中の区」という位置づけから、日弁連による過疎地開業への援助はそのままでは受けられず、行政との独立した関係も築きにくいであろうという弱点はあるものの、約9万人弱という津山市よりちょい少ない程度の人口を抱えた地域でありながら法律事務所がないという状況にかんがみると、新規開業希望の方は、うまくやれば希望の未来を勝ち取れる…かもしれません。
岡山市が政令指定都市化する以前からの中心部の圏域である南区、中区より、岡山市に統合されたとはいえ1969年まで独立した「西大寺市」とその周辺地域で、統合後も「西大寺地域」として独立した扱いを受けることが多かっただけに、ここに事務所を置いていれば、住民意識も「西大寺の弁護士」として定着しやすそうな気はします。
そ う 思 っ て い ま し た 。
ただ、私がある地域のまとまりを調べる際には、中学校区単位を使うことがあります。岡山市は小学校区単位の人口も公表しているため、この観点から東区の人口を中学校区単位で調べてみたところ(令和7年9月末時点)…
旭東…26780人
西大寺…20730人
上道…15184人
瀬戸…14932人
山南学園…6880人
上南…5972人
上道中学校区=上道町が西大寺市にも属したことはなく、西大寺市から2年遅れる71年に岡山市に直接合併されています。瀬戸中学校区=瀬戸町に至っては、平成の大合併の際、まず山陽町等との赤磐市合併協議に臨んだものの調わず、ある意味消去法の選択によって岡山市に加わりました。こうした地域の視線が西大寺に向いているかどうかは、注意深く検討する必要があります。
そして、人口最大地域の旭東中学校区は、正真正銘西大寺市域であったはずですが、人口が集中している地域はむしろ東岡山地域と近く、山や大きな川によって隔てられているわけでもありません。東岡山地域を含む中区は、政令指定都市となる際に、北区ではなく東区にされそうになったことを拒んで分離運動を行った結果「中区」に収まったこと、そして圏域としての吸引力は東岡山地域の背後にある岡山>西大寺地域と考えられることからすれば、住民の意識がすべて西大寺を向いている…というわけではなくても不思議はありません。
こうして細かく検討してみると、「岡山市東区」の圏域人口は、名目的には約9万人弱いるものの、実質はかなり割り引かれ、約5~6万人くらいにとどまるところではないかと思われます。
ただ、そうは言っても、ここより明らかに弁護士の開業に有利な条件を持つ周辺地域が、おそらく県下には残っていない(人口約7.5万人で1事務所の児島くらい?)ことからすれば、独立開業が健闘されても良い地域のひとつではあります。
とりあえず、北区から逃亡して東区へ移転する妄想の自由を行使しながら、法律相談を愉しんできたいと思います。
