「国選弁護人の仕事」
今年から、新年度と新人弁護士の登録時期がほぼ重なるようになったところで、弁護士になって間もない時期の国選事件を思い出しました。
私にとってはまだ片手の指以内の担当国選でした。累犯の現行犯逮捕で、事案自体はかなり軽微な財産犯ながら実刑必至だったのですが、奴は
「被害弁償をしたい」
と言い出しました。うん、いい心がけだ。でも・・・
「お金を出してくれる親族がいるんですか?」
「そんな奴がおったらこんな生活はしていない」
「所持金があるなら、なぜこんな事件を起こしたんですか?」
「お前、バカなのか。所持金があるならこんなことするか」
「・・・じゃあ、弁償するお金は誰が出すんですか?」
「何言ってるんだ。被害弁償は弁護士の仕事だろう」
・・・相手は日本人、話しているのは日本語。なのに、目の前の被告人が何を言っているのか分からない、という経験は初めてだったかもしれません。殺人事件の弁護人はどうなるのでしょうか。
それ以外にも私には理解不能な主張を繰り返す被告人に振り回され、最後は弁論で執行猶予を主張するよう強要され、法的に不可能な主張はできないと拒絶したところで
「お前には弁護士としての魂がない!前の事件でついてくれた〇〇(弁護士。なお、呼び捨て)には魂があった!」
と怒鳴られました。〇〇先生、何をさせられたんですか・・・?
考えてみれば、今は誰もが認める長老である〇〇先生の当時の経験年数に近づきつつある私ですが、奴が認める魂が今なら身についた・・・とは思えません。こうした経験をしながら、新人弁護士は弁護士としての経験を重ねて人として歪んでいくのです。