三浦綾子傑作選

「氷点」とは、下記のように物騒なストーリーの日本文学の傑作です。

氷点(上) amazon紹介文

妻・夏枝が逢い引きをしている隙に3歳の娘を殺害された辻口は、夏枝への復讐のために、密かに当の殺人犯の娘・陽子を養女にする……。

氷点(下) amazon紹介文

兄・徹の友人・北原と愛し合うようになった陽子。しかし母・夏枝は北原にゆがんだ愛情を持ち、2人に陽子の出生の秘密をぶちまけてしまう……人間存在の根源に迫る不朽の名作。

そんな名作の後継者として「令和の氷点」とまで評されたアース製薬公式のインスタグラムは、いよいよ「くろ」の正体を隠せなくなってきてしまいました。ますます目を離せない私ですが、「令和の氷点」という異名がぶっ刺さってしまったついでに、「氷点」に紐づけされた少年期のくろ歴史の記憶も甦ってしまいした。

中学時代の読書感想文は「蒼き狼」(井上靖)に始まり、「氷点」(三浦綾子)で続き、最終年度を「仮題・中学殺人事件」(辻真先)で締めた私ですが、2年時の「氷点」の感想文は私と激しく敵対していた国語の先生のお気に召したらしく、県だか市だかのコンテストに出すための特別指導?の対象となりました。

通常であれば

「ポンコツを出したから再提出させられるなら仕方がないが、いいものを出したためにさらに苦労させられるとは何事か!?」

と激怒する私ですが、この時だけしっぽを振って、大嫌いな国語研究室に、それも指定時間よりかなり早めに通ったのは、当時E組男子代表だった私の前に、いつもD組女子代表として初代女神様が並んでいたからにほかなりません。その待ち時間を利用して、私は初代女神様と話す機会を得ていました。今の私からは想像もつかないほど素直な反応です。・・・どうでもいいけれど、常に呼び出される順番がラストのE組女子代表、かわいそう過ぎないか?

閑話休題。E組女子代表が来る前に繰り広げられた私と初代女神さまの話の中で、提出した感想文のテーマを聞かれた私が「氷点」と答えたところ、私のチョイスは初代女神様の心に刺さったようです。彼女は「氷点」も読んでいて、感想文のテーマにしようかとも思ったけれど、結局別の作品を選んだようで、私のテーマは大いに気になった模様。うんうん、好感触💛

しかし、彼女から三浦綾子の「氷点」以外の傑作として「ひつじが丘」を勧められ、さらに逆にお勧めを聞かれた私は、そう深く考えず、直近で読んだばかりだった「果て遠き丘」で返してしまいました。

ひつじが丘 amazon紹介文

愛とはゆるすことだよ、相手を生かすことだよ……つらくよみがえる父母の言葉。良一への失望を胸に、奈緒実は愛することのむずかしさをかみしめる。北国の春にリラ高女を巣立った娘たちの哀歓の日々に、さまざまの愛が芽生え、破局が訪れる。真実の生きかたを真正面から見すえて感動をよぶ「愛」の物語。

果て遠き丘 amazon紹介文

香也子にとって他人の愛を壊すことは楽しいゲームですらあった。北都の残照に浮かび上がる美貌の姉妹の愛のかたちと人間の信頼、抜きがたいエゴイズムを痛烈に描く傑作。

・・・いま思えば、自分の愛を貫くことの難しさの物語に対して、他人の愛を壊すことを愉しむサイコパスの物語で返すという、史上最悪クラスのかみ合わせと言わざるをえません。過去の自分を一度だけ思い切りぶん殴れるとしたら、私は迷わずこの時の私をメリケンサック付きでぶん殴ることでしょう。こんな対照的過ぎる物語が、1人の作家のペン先から出力されていたという恐怖は、また別問題です。